「おい、ジギー! 本当にこっちで合ってるんだろうな?」
鬱蒼と茂る『ツタの森』の木々をかき分けながら、レオが背中の大きなリュックを背負い直した。メガネの奥の目が、少し不安そうに揺れている。
「大丈夫だって! 親父の古い書斎で見つけたんだ。この森の奥には、終戦直前に作られた『誰も知らない観測所』があるはずなんだよ!」
ジギーは胸を張り、古びた真鍮製のコンパスを掲げた。針は確かに、森の最深部——地元の子供たちが「帰らずの谷」と呼んで恐れる方角を指している。
「まったく……ジギーの 『絶対大丈夫』ほど信用できない言葉はないわね」
ジギーのすぐ後ろを歩くソフィアが、木 々から差し込む光を遮るように手をかざした。腰には自前の懐中電灯と、ロープがしっかりと 括り付けられている。
「でもまあ、ただの公園で泥だらけになって遊ぶよりは、ずっと面白 そうだけど!」
ソフィアがニッと笑うと、ジギーも「だろ?」と笑い 返した。
森の奥に眠る巨大な秘密
三人が森を進むこと一時間。日差しすら届かなくなった深い木々を抜けた先に、それは突如として現れた。
大木の根に半ば呑み込まれ、苔とツタに覆われた古びたドーム状の鉄くず——いや、それは半地下式の頑丈なサイロのようだった。
「うわあ……本当にあった……!」
レオが思わず駆け寄り、ツタを払いのける。金属の表面には、見たこともない複雑な記号が刻まれていた。
「見ろよ! 入口があるぞ!」
ジギーが見つけたのは、重厚なハッチのような鉄の扉だった。中央には小さな四角い窪みがある。
「開くかな?」ソフィアが扉を押してみるが 、びくともしない。
ジギーはポケットから、今朝見つけた「あのカギ」を取り出した 。奇妙な立体パズルのような形をした、重い金属の鍵だ。それを扉の窪みに差し込み、カチリ とひねる。
——ゴーッ……ズズズ……!
地鳴りのような音とともに、重い鉄の扉 がゆっくりと内側へスライドした。湿った冷たい空気と、古い紙と機械の匂いが 一気に吹き出してくる。
地下へと続く広大な空間
三人が懐中電灯を照らしながら階段を降りると、そこには予想をはるかに超える広大な空間が広がっていた。
「すごい……! 卓上無線機に、古い天体望遠鏡……それに、壁一面の巨大な世界地図!」
レオの目が輝いた。手製の工具を取り出し、早速コンソールの機械を調べ始める。
「ここ……ぼくたちの『秘密基地』にしようよ!」
ジギーが声を弾ませた。誰にも邪魔されない、大人たちも知らない、三人だけの特別な場所。
新たな謎と、動き出す運命
だがその時、ソフィアの懐中電灯の光が、部屋の最奥にある「開かずの金庫」を照らし出した。
「ねえ、ジギー、レオ……これを見て」
ふたりが近づくと、そこには一枚の新しめの羊皮紙が置かれていた。埃を被った部屋の中で、その紙だけがまるで昨日置かれたかのように綺麗だったのだ。
羊皮紙には、赤いインクでこう書かれていた。
『この基地を見つけた者たちへ。世界には、まだ地図に描かれていない“7つの遺物”が眠っている。最初の鍵は、君たちの手の中にある』
「7つの……遺物……?」
ジギーがポケットの鍵に触れたその時、基地の奥から「ウィーン……」と、眠っていた機械が動き出す電子音が響き渡った。
壁の巨大な地図の一部が、青く光り始める。光が指し示していたのは、彼らの住む町からずっと遠く離れた——『霧の海』と呼ばれる危険な海域だった。
「……どうやら、ただの隠れ家ごっこじゃ済まなくなりそうね」
ソフィアが不敵な笑みを浮かべ、胸の前でこぶしを握った。
レオはメガネを押し上げながら、光る地図を凝視する。「信じられない……この基地、世界中の異常気象や謎 のエネルギーを観測するための場所だったんだ……!」
ジギーは二人を見回し、ニッと最高の笑顔を見せた。
「決まりだな。ぼくらの冒険は、ここから始まるんだ!」
(第1話・おわり)
🌟 次回予告
第2話:『霧の海の呼び声』
秘密基地の機能を少しずつ復活させた三人。だが、最初の遺物を狙う謎の組織「黒いツバメ」の影が町に忍び寄る。ジギーたちは基地から手に入れた「暗号解読機」を手に、最初の目的地である港町へと出発する——!







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