きょうは、あさから雨だった。 幼稚園についたら、お昼寝のじかんまで、みんなでお部屋であそぶことになったんだ。 ボクは、ずっと狙っていた、あの青いロボットの玩具で遊びたくて、順番を待っていたんだよ。 だって、あのロボット、腕が「グワシッ」って動いて、すごくかっこいいんだもん!
ボクのまえには、タクミくんがいた。 タクミくんが遊び終わったら、ボクの番! ずっと「まだかなぁ、まだかなぁ」って、ドキドキしながら待っていたんだ。
ズルはいけないんだぞ!……でも我慢。
やっと、タクミくんが「はい、おわり!」ってロボットを置いた。 「やったー!ボクの番だ!」って、ボクがロボットに手を伸ばした、そのとき!
横からシュッて、レンくんが割り込んできたんだ。 レンくんは、「あ、これ、ボクがさっきまで使ってたんだよねー」って、ウソをついてロボットを持っていっちゃった。
「えぇーっ!?」って、ボクはびっくりした。 だって、タクミくんの次はボクって、みんなで約束したのに! ズルをするのはいけないんだぞ!
でも……ボクは我慢した。 だって、レンくんは「さっき使ってた」って言ったし、ボクが「ズルだ!」って言ったら、喧嘩になっちゃうかもしれないし……。 「もうすぐ、レンくんも終わるよね」って、またロボットが戻ってくるのをじっと待つことにしたんだ。 ボクは、順番をちゃんと守る、かっこいい「お兄ちゃん」になりたいからね。
もう限界!……あーっ、喧嘩になっちゃった!
でも、レンくんは、ぜんぜんロボットを貸してくれないんだ。 「もうすぐかな?」って、ボクが近くに行っても、わざとロボットの背中を向けて遊んでいる。 ボクがまた、「ねえ、ロボット……」って言おうとしたら、今度はロボットを背中に隠しちゃった!
「もう!ボクが順番待ってたのに!レンくんのズル!」
あーっ、もう我慢の限界だ! ボクの心のなかの「がまん袋」が、プチンって弾けちゃった。 「これはボクの番!レンくん、貸して!」って、ボクは思わずロボットに手を伸ばして、大きな声で言っちゃったんだ。
そしたらレンくんも、「ズルじゃない!ボクのだ!」って、ロボットをギュッて握って離さない。 ボクも、「貸して!」って引っ張る。レンくんも引っ張る。 どちらともなく、ロボットの取り合いになって、喧嘩になっちゃった。
そのとき、ロボットの尖った腕が、ボクのほっぺにシュッて当たった。 「痛っ……」 ちょっとだけ、ボクの顔に傷がついちゃったんだ。 でも、その瞬間、喧嘩もロボットも、どうでもよくなっちゃった。 レンくんが、「あ、ごめん……」って小さな声で言って、ボクも、「ボクもごめん……」って。 先生が来て、二人で「仲直り」の握手をしたけれど、なんだかちょっと、気まずい感じだった。
ママの「超・察知能力」は、ひみつの魔法。
お家に帰ったら、ママが「おかえりー!」って、いつものように迎えてくれた。 でも、ボクは、なんだかいつもと違う雰囲気だったと思う。 だって、ほっぺには小さな傷があるし、なんだか心の中がモヤモヤしていたから。
それでも、ボクはママに、今日あったことをぜんぶぜんぶ話し始めた。 「きょうね、雨でね、タクミくんがね、レンくんがね、ズルしてね、ボクが順番待ってたのにね、喧嘩になっちゃってね……!」 ママに怒られるかな?それともレンくんが悪いって言ってくれるかな? ボクは、ドキドキしながらママの顔を見た。
そしたら、ママは、ボクの話をじっと聞いてくれて、「そっか、順番待ってたのにね。大変だったね」って、優しく笑ってくれたんだ。 そして、ボクのほっぺの傷を見て、「これ、大丈夫?」って、小さなバンソウコウを貼ってくれた。
ママは、何も聞かなかったけれど、ボクが喧嘩をしたこと、我慢していたこと、そしてちょっとだけ頑張ったことを、ぜんぶぜんぶ察してくれている気がした。 ママの「超・察知能力」は、本当に不思議な魔法みたいだ。
ママに話したら、心の中のモヤモヤがすーって消えて、なんだかスッキリした。 レンくんとも、明日幼稚園に行ったら、もっとちゃんと「おはよう!」って言える気がする。 きょうは、ちょっぴり喧嘩もしちゃったけれど、ボクは、またひとつ、「かっこいいお兄ちゃん」に近づけたのかもしれないな。





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